栄光学園の国際教育

世界各国で展開されているすべてのイエズス会教育機関は、共通するひとつのプロファイル(育成しようとする卒業生像)をもっている。それが「men for others, with others(他者のために、他者とともに生きる人)」である。
1947年の開校以来、栄光学園は一貫してリーダー(指導者)を育成することをミッションとしているが、それは、権力をもって人々を従わせるリーダーではなく、むしろ他者に仕えるリーダー、人々の幸せのために貢献するリーダーである。
ヒト・モノ・情報などが世界全体を活発に往来していくグローバル社会において、栄光学園が輩出するそのようなリーダーに今後必要となる資質とはなにか。
それは、国境をまたいで広く国際的に活躍する場合にはもちろんであるが、たとえ活動範囲が空間的にはひとつの地域にとどまっていても、キリスト教ヒューマニズムに基づきグローバルな視点で物事を考えて行動することができることである。換言するなら、社会的弱者を排斥して自国の利益を守る壁となるのではなく、むしろ世界各地の国家や民族の架け橋となり、人々の幸福に寄与できることである。栄光学園は、イエズス会学校として、そのような真のグローバルリーダーとして活躍できる人を世に送りだすことが求められている。
そのようなリーダーのプロファイルは、より具体的には以下のとおりである。

  • 1.キリスト教ヒューマニズムに根ざした叡知を持ち、国際社会が抱える諸問題解決の糸口を探求し、その解決へと根気よく取り組むことができる人。
    (貧しい人弱い人への共感、社会問題に対する関心と理解、持続的探求力)
  • 2.国籍や文化の異なる人々とのコミュニケーションを形成しようとする意志をもち、差異を認めつつも対立や分裂を乗り越えていくために力を尽くすことができる人。
    (コミュニケーション能力、語学力、異文化受容力)
  • 3.世界の人々が共存できる道を模索し、自国の利益のみを優先して他国を犠牲にするのではなく、ともに共栄する新たな社会構造を築こうとするグローバルな視野を持つことのできる人。
    (論理的思考力、社会的構想力、地球規模の問題への関心)

日常的な生活圏から外に出る機会がないままでは、自分たちの国が周辺国からどのように位置づけられているか、どのようなことを期待されているかを知る機会は少なく、世界の中に生きる自分を客観視して認識できるようになることは難しい。その結果、ともすると生徒たちは、近視眼的に目前の目的のみを人生の目標を設定してしまうことになりかねない。
本校国際交流プログラムは、これからの世界で求められているグローバルリーダー、とりわけイエズス会教育が輩出しようとしているグローバルリーダーを育てることを目的としており、イエズス会教育機関の世界的なネットワークを活用してその目的を達成することを特徴としている。
国や地域によってそれぞれの教育機関が置かれている社会的経済的文化的な課題や条件に違いがあっても、イエズス会学校としてその目指すべき所が同じであると理解することを通じて、イエズス会学校の卒業生としてのプロファイルを実現できる人を世に送りだしたい。

セブ島のイエズス会学校との短期交換留学

本校の国際交流は、フィリピン共和国セブ島セブ市に隣接するマンダウェ市にある、セークリッド・ハート・スクール(Sacred Heart School-Ateneo de Cebu = SHS-AdC)との交流が中心です。このプログラムは、「日常の学校生活の中では体験できない異文化体験を通じ、相互に啓発しあうことによって、国際的な視野を涵養すること」を目的としています。SHS-AdCと本校の生徒とご家庭から、ご理解とご協力をいただき、5月に受け入れプログラム、8月に派遣プログラムを実施しています。

なぜフィリピンと交流をするのか

国民の85%がカトリックであり、近隣にあるアジアの途上国であるので、異文化体験には最適と考えています。また、英語が公用語のひとつでもあり、生徒が習得しつつある英語をコミュニケーションの手段として用いることが可能であることも大きな利点です。

なぜSHS-AdCと交流をするのか

SHS-AdCは、日本の学校との交流に強い関心をもつ、栄光学園と同じ、イエズス会の高等学校です。両校とも派遣と受け入れの相互交流に関心があり、(1)ホームステイ、(2)スクールステイ(普段の授業への参加)、(3)エクスポージャー(体験学習)を交流の三本柱とすることで一致しました。

プログラムの紹介

受け入れ 10人のSHS-AdC生が5月頃、栄光生の自宅に約2週間ホームステイし通学する。栄光祭において、SHS-AdC生と栄光生が合同でフィリピン紹介の展示を行う。
派遣 10人の栄光生(高校1・2年)が8月頃、SHS-AdC生の自宅に約2週間ホームステイし通学する。授業では日本紹介のプレゼンテーションを行い、社会見学を目的として、ホームステイ先とは別の一般市民のコミュニティーでの滞在も実施している。

栄光学園の国際交流の沿革

1992年 国際交流委員会発足
秋、オーストラリア・アクワイナス高校の生徒7人を2週間受け入れる。
1994年 フィリピンの学校との交流の準備(栄光学園教員がマニラ市とセブ市のイエズス会高校を視察)
1995年 Sacred Heart School for Boys (SHS-B) との交流の準備(栄光学園教員とSHS-B教員が相互に視察)
1996年~ 第1回~国際交流プログラム開始

ボストンカレッジ夏季研修

アメリカのボストンカレッジ、イエズス会教育高等研究所(Institute for Advanced jesuit Studies)が企画するEver to Excelというプログラム(https://www.bc.edu/bc-web/centers/iajs/programs/ever-to-excel.html) に、本校から40名の高校生が参加しています。イエズス会の精神が豊かに息づく大学のキャンパスで、アメリカ全土から集まる高校生とともに、イエズス会の精神性、リーダーシップ、奉仕そして教育を深く経験します。プログラムを通して、それぞれに与えられている才能を意識し、それを現在そして将来に向けてどのように用いていくべきか考えます。参加者、メンター(大学生のリーダー)、指導者と共に、人生についてより深く考える特別な一週間です。

プログラムの内容

Ever to Excelのプログラムでは、1日ごとに設定されたテーマについて考え、内省を繰り返していきます。5日間のテーマは以下の通りです。

1日目
Foundation /
Identity
無償の愛の経験はどういうものか。自分を規定するものは何か
2日目
Formation /
Voice
指導者や友達が自分の成長にどのような影響を与えてきたか
3日目
Discernment /
Pilgrimage
人生の旅における決断をどのように下し、それがどのような影響を与えるのか
4日目
Mission /
Service
寛大な心を持って他者のために働くことと、それについて自分が望むこと
5日目
Magis /
Ever to Excel
人生において卓越性を求め(すべてに神を見出し)続けること

上記の各テーマについて、講義やパネルディスカションを聞き、その後でグループ・ディスカッションをします。現地の高校生に混ざっての英語でのディスカションなので大変ですが、メンター(大学生リーダー)の助けもあり、栄光生もなんとかついていくことができます。午後にはハイキング、市内観光、アイスクリームパーティーなどのソーシャルイベントもあり、参加者同士の交流も深まります。
Ever to Excelとは別に、ボストン滞在中にボストンカレッジ以外の大学にも訪問をします。ハーバード、マサチューセッツ工科大学でのキャンパスツアーを行ったり、アメリカの大学( ボストンカレッジ、ハーバード、マサチューセッツ工科大学)に在籍する、または卒業した本校卒業生に話を伺ったりします。